Hawai’i ハワイ
ハワイの神話、聖地、歴史、文化についてのページです。
少しずつ内容を充実させていく予定です・・・
ハワイの神話
ハワイの神話の魅力は、なんといってもユニークな神々が登場するところです。
ハワイの神々は決して完全無欠な存在ではなく、わたしたちと同じように喜んだり、悲しんだり、怒ったり、反省したりします。
とても身近に感じられる神様です。
そんな神様の話の中には、実は大切な意味がこめられているのです。
それは歴史であったり、教訓であったり、宇宙の真理であったりします。
わたしたちがこんなにハワイ神話に惹かれるのは、そこに何かしら大切なものがあると感じ取っているからなのだと思うのです。
そんなハワイ神話の魅力を少しでも感じていただけたら嬉しいです。
*神話・伝説にはさまざまな説があり、地名、人名も話によって異なります。ここでご紹介するのは、いくつかの資料をもとにして書き下ろしたものです。
【女神】
ペレの神話
●ペレの旅
はるか遠い東のほうにカヒキと呼ばれる神々の国がありました。
ペレはそこで生まれました。やがて成長したペレは、カヒキを出て旅に出ることになりました。
その理由はいろいろな話が伝えられています。姉の夫と浮気をしたのが発覚してカヒキにいられなくなったから、大火事を起こして追放されたから、夫が自分の妹と駆け落ちをしたのを追いかけるため、新しい世界を知りたかったから・・・
いずれにしてもペレは海の守護者でもある兄カモホアリイが用意してくれたカヌーで、まだ卵の状態だった妹ヒイアカを抱き、妹や弟たちと一緒に旅に出たのでした。
ペレを載せた船はやがてハワイ諸島の最も西にあるニホア島にたどり着きました。そこにはペレが永住できるような深い火口はありませんでした。
つぎにニイハウ島へ向かいました。そこにも火口は見つかりません。つぎつぎと東に向かって島を巡り、終のすみかを探しました。
ペレはカウアイ島、オアフ島と旅を続けますが、なかなか適した場所がありません。良い所があっても、あとから追いかけてきた姉である海の女神ナマカオカハイによって海水で水浸しにされてしまいます。
とうとうマウイ島ハナで、ペレは姉と直接対決をすることになりました。けれども火は水に勝つことはできませんでした。ペレは姉に敗れてしまったのです。
ペレは魂となって、マウイ島からハワイ島へと飛んでいきました。
そしてキラウエア火口にあるハレマウマウ火口を見つけました。キラウエアは標高が高いので、さすがのナマカオカハイも海水を流し込むことはできません。
こうしてペレはようやく永住の地にたどりつきました。
今でもペレはハレマウマウ火口に住んでいると伝えられています。
*「ペレの旅」は『ハワイの女神~ ペレとヒイアカの旅』で詳しくご紹介しております。参考にしてください。
●ペレとポリアフのそり競争
ポリアフはハワイ島のマウナケア山に住む雪と氷の女神です。
あるとき、ポリアフは友達と一緒にそり滑りを楽しんでいました。それは山の斜面を木製のそりで滑り降りる王族のスポーツです。
そこに黒いマントをはおった美女があらわれて、自分とそり競争をしないかといいました。
そこで二人は競争することになりました。ポリアフはそり滑りがとても上手で、黒マントの美女よりもずっとはやくすべっていきます。
このままいけばポリアフが勝つだろうと誰もが思っていると、突然黒マントの美女がそりから飛び降りて、地面を足で踏み鳴らしました。その瞬間、地面が割れて、真っ赤な溶岩が噴出しました。
黒マントの美女はペレだったのです!
溶岩はそりをすべっているポリアフめがけて、どんどん流れていきます。
ポリアフは地響きを耳にして振り返りました。後ろから溶岩が迫ってくるのに気づいたポリアフは、すぐにそりから飛び降りると、その場に立って溶岩のほうに向きなおりました。そして自分の白いマントを広げて、マウナケアの山頂から冷たい風を呼び込んだのです。
冷たい風がどんどん吹き付けます。溶岩は冷たい風にさらされて、少しずつ勢いが弱くなってきました。ポリアフの目の前まで迫ってきた溶岩は、ポリアフを避けるようにして二手に分かれて流れていきました。
それを見ていたペレも、寒さに凍えながら、キラウエアのほうへ帰っていきました。
●ペレとカマプアアの戦い
カマプアアとはハワイ語で“豚の子ども”という意味です。豚の姿をしていますが、ときに人間のハンサムな若者、魚、雑草などの姿になってあらわれます。
ある時、カマプアアがキラウエアを通りがかりました。そこで目にした美しいペレに一目ぼれをしたカマプアアは、ハンサムな人間の若者に姿を変えて、ペレに愛を伝える歌をうたいました。
けれどもペレは、すぐに相手がカマプアアだと見抜きます。そして「あなたは豚の子でしょう」といって嘲り笑ったのです。
それを聞いたカマプアアは腹を立てて言い返します。そしてペレもさらにやり返します。そしてお互いにだんだんとエスカレートして、ついには怒りを爆発させることになりました。
ペレはカマプアアに向かって真っ赤な溶岩を流すと、カマプアアは嵐を呼び寄せて、大雨を降らせます。
あたりは惨憺たる有様となりました。このままでは、ペレが住んでる火口も水浸しになってしまうでしょう。火口の火が消えたら、もうそこには住めません。それを心配したペレの兄や妹たちは、ペレに降参するよう説得しました。
こうしてペレはカマプアアの妻になりました。けれども二人の間には争いが絶えません。
そこで二人は別々に住むことになりました。ペレはハワイ島南部の乾燥した地域に、カマプアアは北部の雨の多い地域に分かれて暮らしました。
そんな暮らしに嫌気がさしたのか、やがてカマプアアはハワイを去っていきました。はるか遠い地で、女性の首長と結婚したとも伝えられています。
●ペレと二人の少女
昔むかし、二人の少女がウル(パンの木)の実を蒸し焼きにしていました。
そこに一人の老女があらわれて、自分にも分けてくれないかと言いました。
年上の少女は、これは家族のためのものだから、あげられないと答えました。自分のウルを老女に分けるのが嫌で、嘘をついたのです。
けれども年下の少女は、自分のウルをどうぞと差し出しました。
老女は差し出されたウルを食べ終わると、年下の少女にだけ聞こえるように小声でいいました。
「両親に伝えなさい。もうすぐ山で何かが起こる。家の入口に白いタパ(樹皮布)の目印をつけておくように」
そして老女は去っていきました。
年下の少女は家に帰ると、老女の言葉を両親と祖母に伝えました。
少女の祖母は、「お前はいいことをしたね。その老婆はペレだよ」と言いました。そしてすぐに白いタパを家の入口にさげました。
数日後、少女が住む村の裏山にある火口が噴火して、溶岩がどんどん流れ出しました。
溶岩は、ウルを老婆にあげなかった年上の少女の家を飲み込みました。けれどもウルを差し出した年下の少女の家は、避けて流れていったということです。
●オヒアレフアの伝説
昔むかしのお話です。
オヒアという若者とレフアという娘がいました。二人は結婚を約束していました。
あるときペレが、オヒアを一目見て好きになってしまいました。さっそく自分の夫になるようにと迫ります。
けれどもオヒアは、自分にはレフアというフィアンセがいると告げて、ペレの愛にこたえようとしませんでした。
それを聞いたペレは嫉妬の炎を燃やし、挙句の果てに溶岩を流してオヒアを殺してしまったのです。
それを見ていたペレの妹たちは姉の行いを責めました。そしてペレも、だんだんと怒りがおさまるにつれて、自分の行いを後悔するようになりました。
そこでペレはオヒアを木に変え、レフアをその木に咲く花に変えました。
こうして二人の恋人は、永遠にひとつになったのでした。
オヒアレフアの木は、男性的な木の枝に、可憐な女性的な花が咲くのはこのような訳があったのです。
「レフアの花を摘むと雨が降る」といわれるのは、引き裂かれた二人が涙を流すからだそうです。
●ペレとカハワリのそり競争
昔むかし、カハワリという若いチーフがいました。
ある時、そり競争を楽しんでいると、そこに一人の老婆が現れて、自分と競争しないかといいました。
それを聞いたカハワリは、そんな年寄りに、そり滑りなんてできっこないと大笑いすると、そりに飛び乗って滑りはじめました。
カハワリは夢中でそりを滑っていると、山の下で人々が何かを叫んでいるのに気づきました。
ふと後ろを振り替えてみると、なんと後ろから先ほどの老婆が炎の塊となって、溶岩流の上に乗って追いかけてくるのが見えました。
老婆はペレだったのです!
カハワリは必死になって海まで逃れました。もうちょっとで溶岩流に飲み込まれるというところで、ちょうど海から戻ってきた弟のカヌーに逃れることができ、ほかの島に逃げのびたということです。
●ペレとクムカヒ
昔むかし、ハワイ島にクムカヒという若いチーフがいました。
あるとき、クムカヒがゲームを楽しんでいると、そこに一人の老婆が現れて、自分もゲームに混ぜてほしいといいました。
クムカヒは、年寄りには無理だといって相手にしませんでした。
それを聞いた老婆は、突然怒りを爆発させました。地面が大きく裂けて、溶岩が噴出したのです。
老婆はペレだったのです!
クムカヒは海に向かって必死に逃げました。そしてあともう少しで海だというところで、溶岩に飲み込まれてしまいました。
そのときの溶岩流が、ハワイ島最東にある岬をつくったといわれています。
そしてその岬の名前は、このチーフの名前をとってクムカヒ岬と呼ばれています。
●ペレに故郷自慢をした男
昔むかしのお話です。
キラウエアにやってきたひとりの男が、自分の故郷プナがどこよりも素晴らしいと自慢をしました。
それを聞いていたカフナ(聖職者)が注意をしました。
「ここはペレの地だ。ペレは傲慢な者を嫌う。お前はペレを怒らせた」
カフナの忠告を聞いても、男はまったく気にしない様子でした。
やがて男は故郷に帰りました。プナを見はらす高台までやってきた男は、目の前の光景に唖然としました。
そこには一面の黒い溶岩大地が広がっていたからです。
男は自分が傲慢だったことを、そのとき悟ったのでした。
ヒイアカの神話
●ヒイアカの旅
あるときペレは長い眠りにつきました。身体から抜け出た魂は、すばらしいチャントと太鼓の音に導かれるようにハワイ島からカウアイ島へ向かいました。
そのチャントの声の持ち主は、カウアイ島の王ロヒアウでした。ペレは一目でロヒアウに恋をします。
さっそくペレは人間の女性の姿になってロヒアウの前に現れました。ロヒアウもすぐにペレと恋に落ち、二人は結婚します。
けれども、ペレはいつまでもカウアイ島にいるわけにはいきませんでした。キラウエアの火を燃やし続けなくてはならないからです。
そこで、あとから妹を迎えによこすので待っていてほしいと言い残し、ペレはロヒアウの前から姿を消しました。
ハワイ島で長い眠りから覚めたペレは、妹たちに誰かカウアイ島までロヒアウを連れてきてほしいと命じます。そこで一番下の妹ヒイアカが自ら名乗り出ました。
ヒイアカは、ペレから魔法のパウ(スカート)や魔術を授けられ、パウオパラエやワヒネオマオというお供とともにキラウエアを出発し、ハワイ島からつぎつぎと島を渡って旅をしました。
途中、モオと呼ばれるトカゲの姿をした怪物と何度も戦ったり、いろいろな人の病を癒したりしながら、ようやくカウアイ島へとたどり着きました。
やっとロヒアウがいる場所を見つけたのですが、すでにロヒアウは死んでいることを知りました。
この旅で癒しの力を見につけていたヒイアカは、特別な儀式を行って、ロヒアウの魂を遺体に戻して生き返らせることに成功します。
そして元気になったロヒアウと一緒に、ハワイ島へと帰っていきました。
一方、ハワイ島のペレは、なかなかヒイアカが帰ってこないのに腹を立てていました。もしやヒイアカとロヒアウはお互いに恋をして、戻ってこないのではないかと邪推していたのです。そう思うと怒りがどんどん沸き上がり、とうとうペレはヒイアカが大切にしていたオヒアレフアの森と、親友のホーポエに溶岩を流して破壊してしまいました。
やっとハワイ島に戻ったヒイアカは、森と親友の無残な姿を見て愕然とします。そしてはじめて姉ペレに対して怒りを覚えるのでした。
そしてペレの目前で、密かに心を寄せていたロヒアウとかたく抱き合ったのです。実は長い旅の間で、ふたりはお互いに惹かれていたのですが、それまで気持ちを抑えていたのです。このときヒイアカは、はじめて姉に反抗したのでした。
ペレも最初は自分の非を認めませんでしたが、最終的には、自分が悪かったことをヒイアカに謝りました。
その後、ヒイアカはロヒアウとカウアイ島で幸せに暮らしたということです。
*「ヒイアカの旅」は『ハワイの女神~ ペレとヒイアカの旅』で詳しくご紹介しております。参考にしてください。
●パウ・オ・ヒイアカの伝説
ある時、ペレはサーフィンをするために海に行きました。
まだ赤ん坊だった妹のヒイアカを連れていき、日陰のやわらかな砂の上に寝かせました。
そしてペレは海に入り、サーフィンを楽しみました。
しばらくして、ふと浜のほうを見たペレは、ヒイアカのことを思い出しました。ヒイアカを寝かせてきた場所は、もう日が当っているかもしれません。
大急ぎで浜に戻ったペレは、ヒイアカの姿を見てほっと胸をなでおろしました。
つる性の植物が、岩の上をはってどんどん茎をのばして、ヒイアカの上にひさしをつくってくれていたからです。
おかげでヒイアカは熱い日差しから守られていました。まるでその様子は、母親が自分のスカートで子どもを守っているかのようでした。
その様子を見たペレは、その植物に「パウ・オ・ヒイアカ」(ハワイ語で、ヒイアカのスカート、という意味)と名付けました。
Copyright ©新井朋子 All Rights Reserved. 無断複写・無断転載厳禁